第六章・―逃げる想い、掴む想い―

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 俺がみっともなくこんな思いを抱いている事を、彼女は気付いているのだろうか。きっと気付いていないだろうな。    本当に俺は不器用で、彼女にプレゼント一つ渡すのだって、誰かの手助けがないと選ぶ事すらできない。    そんな俺が欲しいものはただ一つ、彼女だけだ。    そのために今できる事を、俺ができる唯一の事は……。   「……俺、はっきり言うよ」    彼女にはっきりと言う。    告白の時よりも強く、はっきりと自分の気持ちを伝えてみせる。    ……指輪一つで動かせる気持ちなんてないって分かっているけど、それでもなにか、彼女を想っているという証拠が欲しかった。
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