第六章・―逃げる想い、掴む想い―

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 どんなに言葉を重ねても、想いを重ねても、物を積み上げても敵わない。たったそれだけで表現できる方法があるなら、俺はそれにかけたいんだ。   「応援、しているからな」    海斗が肩に手を置いて言ってくれる。その隣では、沙織さんがにっこりと笑って頷いてくれた。    彼女を幸せにしたい。    俺にできるかどうか、それはまだ分からないけど、彼女を幸せにする自信なら誰よりも持っている。    ビロウド張りの箱を握りしめる。数日後、彼女との待ち合わせの日まで緊張がほぐせなくて、ただ時間が過ぎるのを待っていた。    ――早く彼女に逢いたくて、きっと喜んでくれる、きっと……。
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