第六章・―逃げる想い、掴む想い―

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「ところでさ、猫ちゃん。……食事が終わったら、だい……」   「あれー? なんだ、もしかしなくても、涼じゃん」    きり出そうとして話し始めたのに、その前に聞き慣れた同僚の声が耳に入る。――見付かってしまった。   「どうも、飲み会ってこの辺でですか?」    声をかけられた以上無視する訳にもいかず、とりあえず答えると、案の定からかうような言葉が返ってきた。   「お前こそ、“今日はどうしても無理だ”って、デートだったのかよ」    何とか断らなければいけない、彼女に不快な思いをさせたくはない。    そう内心で焦りながらやり取りをしていると、最近やけに話しかけてくる後輩の女子と彼女が、喧嘩を始めてしまった。    俺が自分の思い通りにならないがための、後輩の嫌味に彼女の怒りが爆発してしまったのだ。
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