第六章・―逃げる想い、掴む想い―

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 ――まただ。    また、俺がふがいないせいで彼女に不快な思いをさせてしまった。そんな思いをさせたくなくて、なのに上手くはいかなくて、馬鹿な俺は後悔ばかりだ。   「……私、帰ります」   「え、猫ちゃ……あっ、ちょっ」    なにか声をかけようとするより先に、彼女はそう呟くと走り出してしまった。    つかもうとした手も振り払って、俺から逃げるように、振り向きもせずに――。    俺は今度こそ聞かなければいけない、彼女を引き止めて、本当の気持ちを教えてもらいたい。    こんな俺でも、彼女にふさわしい男でいられるのかどうか。
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