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月が綺麗に輝く夜の路地裏で俺はボロボロになって倒れてた。
二人組に絡まれ逃げる間もなく殴り倒されこのザマだよ。
夜空を一人で歩くのは好きだが危ない奴らが彷徨いているから俺みたいな弱い人間は的にかかりやすい。
「クソ野郎が‥。」
誰に言うわけでもなく呟くと起き上がろうとしたが足に力が入らない。
このまま野垂れ死にするのもいいなんて思っていると
「生きてるか少年?」
笑いながら見下ろしているのは特攻服を纏った一人の女だった。
「構わなくていいから行ってください。アンタも巻き込まれたくないでしょ。」
喧嘩に負けて女に助けられたなんて格好悪すぎる。
それにこんな場所に女が一人でいたら何があるかわからない。
「あたしには誰も近づかないから大丈夫。これあげるから早く帰りなよ。」
女は絆創膏を置くと片手を上げて表通りに歩いて行く。
女の背中に施された刺繍に俺の目は釘付けになった。
¨風姫舞踏゛
真っ赤な特攻服に金文字が刺繍されていた。
しばらくすると遠くから轟音が響いてきた。
体に気合いを入れてなんとか表通りにでると何十台もの単車が走っている。
そのうちの一台が路肩に止まるとさっきの女を乗せて走り去った。
俺は長い髪をなびかせていく後ろ姿を見つめてたんだ。
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