学校

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「先生ー女の子ですか?男の子ですか?」 とありきたりな質問を男子生徒が発する。 「それはな…」 男性教師は返答しようとしたが、その必要はなかった。 臨が呼ばれてもいないのに教室へ入ってきたためだ。 驚く男性教師を見もせずに一言、 「森羅 臨。よろしく」 と端的に言い放つと自分の席であろう空いている席に向かって早足で移動し座った。 教室はしばらく静寂を保っていたが、教師が適当に場を取り繕うと周りの生徒は小さな声でヒソヒソと話し始めた。 『他人とできるだけ関わりを持たない』 先程の行動は元々人見知りが激しい臨が他人を拒絶するために行った行為だ。 もし彼女が普通に事を進めていたのなら、質問責めに会い彼女の機嫌を悪くすることになっていただろう。 それに彼女は『学校』という場所で得るものは何もないと感じていた。 未明はきっと得るものがある、と言っていたが臨にとってはきっと無くてもいいものだし、たとえ『何か』を得たとしても既に『普通』の世界にいない臨にとって『普通』の世界で得られるものは無価値なものに感じられるだろう。 だが極稀に『普通』の世界にも『普通でないもの』があったりする。
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