第1章 始まった日々

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「あ、えっと、なにしてるん、ですか・・・?」 ・・・我ながら、本当にアホな台詞だ。 なにしてるって、ベンチに座ってるに決まってるじゃないか。 せっかく一歩進もうと、勇気を振り絞った結果がこれか。 馬鹿か、俺は・・・。 そんな自己嫌悪に陥っていると、今度は彼女が口を開いた。 「あっ、すみません。失礼ですよね。ずっと顔を覗いているなんて・・・」 幸いというべきか、彼女は俺が考えていたようなことは頭になかったらしい。 冷たく返されることもなく、少し安心した俺は、とりあえず会話を繋げることに専念した。 「あっ、いや別に、俺もなんか邪魔しちゃったようで申し訳ない。せっかく気持ちよさそうに微睡んでたのに」 「えっ!? 見られてましたか? ああ、ちょっと恥ずかしいです」 そう云って、少し恥じらいの表情をみせる彼女は、昨日の美しさとは打って変わって、『可愛い』という言葉がよく似合う。 ていうか可愛い・・・。 (ハッ! 危ない危ない!) 彼女の可愛さに意識をもっていかれそうになったが、なんとか目の前の状況に帰ってきた。 「あ、大丈夫ですから。そんなに気にしなくても」 「そうですか、なら良かったです。有り難う御座います。私なんかに気を使っていただいて」 そう云って、今度は完全な笑みを輝かせる彼女に、俺は一つのものを連想する。 それは、ここから見える、あの・・・・・・ 「? どうかしましたか?」 「えっ!? ああいや、なんでもないです」 いきなり顔を覗き込んできた彼女にびっくりした俺は、咄嗟にそう答えていた。 そして、思った。 やっぱり、彼女の笑顔は、夏の海のようだと・・・。
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