3人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、えっと、なにしてるん、ですか・・・?」
・・・我ながら、本当にアホな台詞だ。
なにしてるって、ベンチに座ってるに決まってるじゃないか。
せっかく一歩進もうと、勇気を振り絞った結果がこれか。
馬鹿か、俺は・・・。
そんな自己嫌悪に陥っていると、今度は彼女が口を開いた。
「あっ、すみません。失礼ですよね。ずっと顔を覗いているなんて・・・」
幸いというべきか、彼女は俺が考えていたようなことは頭になかったらしい。
冷たく返されることもなく、少し安心した俺は、とりあえず会話を繋げることに専念した。
「あっ、いや別に、俺もなんか邪魔しちゃったようで申し訳ない。せっかく気持ちよさそうに微睡んでたのに」
「えっ!? 見られてましたか? ああ、ちょっと恥ずかしいです」
そう云って、少し恥じらいの表情をみせる彼女は、昨日の美しさとは打って変わって、『可愛い』という言葉がよく似合う。
ていうか可愛い・・・。
(ハッ! 危ない危ない!)
彼女の可愛さに意識をもっていかれそうになったが、なんとか目の前の状況に帰ってきた。
「あ、大丈夫ですから。そんなに気にしなくても」
「そうですか、なら良かったです。有り難う御座います。私なんかに気を使っていただいて」
そう云って、今度は完全な笑みを輝かせる彼女に、俺は一つのものを連想する。
それは、ここから見える、あの・・・・・・
「? どうかしましたか?」
「えっ!? ああいや、なんでもないです」
いきなり顔を覗き込んできた彼女にびっくりした俺は、咄嗟にそう答えていた。
そして、思った。
やっぱり、彼女の笑顔は、夏の海のようだと・・・。
最初のコメントを投稿しよう!