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そう思ったところで俺は一つのことに気が付いた。
まだ彼女の名前を知らない。
「あっ、俺、本村知告っていいます。以後宜しくです」
なんとも締まらない初め文句だったが、これが今の俺の精一杯なのだから仕方がない。
しかし、彼女なら答えてくれるだろう。
そして、俺の予想通り、彼女は答えてくれた。
「あっ、すいません。自己紹介がまだでしたね。私は、えっと、白河夏海(しらかわ なつみ)です。宜しくお願いします」
俺は驚いた。
そして思った。
夏の海のように光り耀く彼女は成るべくして成ったんだ、と。
名前。
それには偉大な意味があるのだと、俺は思っている。
四年前に亡くなった、俺の祖母がいつも俺に聞かせてくれた、金言のようなものがある。
『名前には、必ず意味がある。その意味は、その名前の人の一生を決めてしまうほどに偉大なものなのだ。しかし恐れる必要はない。その偉大な意味は、その名前の者自身なのだから』
この言葉を忘れたことはない。
今も完全には理解出来ていないが、大切な意味があるということだけは分かる。
だから俺は自分の名に自信を持っている。
そして、彼女もその名前に自信を持ってほしい。
そんな、素晴らしい『意味』を授けてくれた人に感謝しながら。
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