第1章 始まった日々

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彼女が去ったこの高台のベンチに腰を下ろし、俺は考えていた。 昨日の彼女の、あの切なさを、今日俺は少しでも拭い去れただろうか、と。 今日、彼女は笑っていた。 とても昨日のような表情からは考えられないくらいに・・・。 作り笑い、といった感じではなかった。 確かに彼女は『笑っていた』のだ。 それは俺が少しでも、彼女の為になったということだろう。 それだけで、満足だ。 俺なんかが、昨日のような彼女から、救ってあげられた。 少し自意識過剰かもしれないが、俺にとってはそれでもよかった。 彼女が笑ってくれるなら・・・。 また・・・・・・来よう。 昨日とは、意味は同じでも、込められた感情は全く違う、この思い。 石段を降りる度に、気持ちは前へ前へと進んでゆく。 先の視えない、この果てなき青空のような、未来に向かって・・・。 今は、ただひたすらに・・・。
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