第1章 始まった日々

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[夏休み一日目] 「死ぬってマジでこれは・・・」 ・・・あまりにクタクタで、喋る言葉の区切りさえすっ飛ばしてしまったが、別に独り言だから問題ないだろう。 ていうか、こんなクソ暑い日に、丸一日剣道場で面を被って練習なんて、やってらんねぇよ・・・。 すっかり朱色に染まった空を見上げながら、俺はため息をつく。 今日から夏休みは始まった。 しかし部活は変わりなく、ていうか休み前よりさらに長時間練習があるので、実質休みじゃない・・・。 しかし、明確に夏休み前と変わったところがある。 俺は今、その『変化』と逢う為に、この怒りさえ覚えるほどしんどい石段を登っている。 (昨日、約束っぽいものを取りつけたから、また居るだろう・・・・・・多分) ・・・居なかったらどうしましょうかね? 泣きながら、沈みゆく夕日を見なきゃダメなんすかね・・・。 ・・・やべぇ、マジで不安になってきた。 疲れているせいか性格のせいかは分からないが、そんなネガティブ思考を働かせていると、石段の終点、高台の入り口の所から、綺麗な澄んだ声が聞こえた。 「知くん、頑張ってください。もうちょっとです」 ・・・ああ、ほんとに彼女は天使じゃないのか? 俺のネガティブ思考は、どうやら取り越し苦労だったようだ。 彼女は、俺が疲れていると見破ったのだろう(まあ端から視ても、疲れているのなんて丸解りだとは思うが・・・)。 だからわざわざあんな所から、俺を励ましているのだろう。 ・・・本当にありがとうございますっ!
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