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「・・・行くか」
結局観念して登ることにした俺は、黙々と石段を上がっていった。
途中、六十三段目で挫けそうになったが、そこは我慢の一本通しで、なんとか高台まで登りきった。
その高台の場所は、広いとも、狭いともいえない面積で、あるのはベンチ二組だけ。
これだけだと、とても哀しい公園みたいだが、それをカバーするのが、この高台から眺望できる風景だ。
この高台がある場所が、一部とても高い崖みたいになっている丘の頂上付近で、その崖側には落下防止用の柵があり、そして夕日が沈む海を眺めることができる。
友人にも教えていない、俺のお気に入りの場所だった。
小学生の頃、この場所を見つけたとき、とても感動して、何日もこの場所に通いつめたこともあった。
中学生の頃は、いろんな悩み事で頭がはち切れそうになったとき、ここに来ては、ずっと海や空を眺めて心を落ち着かせてきた。
そういえば、中学二年の時、この場所で傷ついて、翔べなくなっていた白い小鳥を助けてやったこともあったっけかな。
そんな、様々な思い出が詰まった、俺にとって大切な場所だった。
高校に入ってからは、忙しくてなかなか来ることができなかったが、部活がたまたま早く終わったので、久しぶりに来ることにしたのだった。
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