プロローグ

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潮のにおいが微かに混じる風。 西日が染める紅く輝く海。 まるで暖かい灯火のような空。 ずっと前から変わらない、この場所。 ずっと先も変わらないだろう、この場所。 しかし、今日は違った。 変わったところが、一つ。 いや、美しさが一つ、そこに在った。 それは、一人の少女だった。 白いワンピースのような、神秘的ともいえる服を纏い、セミロングの美しい黒髪を風に靡かせる、天使といっても過言ではないほどに美しい少女だった。 夕日によって、すべてが紅く染め上げられたこの場所で、彼女は紅い海にその瞳を向けて立っていた。 彼女自身も紅く染められながら。 俺はなにもすることが出来なかった。 それはただ、美しさに見惚れていたからではない。 彼女の、とても切ない眼差しを見てしまったら、俺は金縛りのように動けなくなってしまったのだ。 その、切なすぎる眼差しを見たら・・・・・・
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