第1章 始まった日々

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俺はまた、天国への試練の前に居た。 今日は昨日より、ここに来た時間がかなり早く、まだ日は頭上に煌々と照り輝いていた。 今日の学校は、夏休み前日ということで、終業式とLHR(内容は、恒例の夏休みの過ごし方の注意事項と、各教科の宿題の配布だった)の、合計二時限のみだった。 今日は全ての部活動が一律停止なので、こんなにも早くこの高台に来ることが出来たのだった。 部活が休みということは、本来昨日より比較的楽に、この試練に挑むことができる筈なのだが、俺は一回家に帰り、昼飯を食ってきたので、昨日とはまた違ったしんどさがある。 (まあ、そんなことどうでもいい。それよりも・・・) 昨日の彼女・・・。 俺にとっての目下の心配事はそれだった。 はっきりいって、夏休みに関する注意事項など、頭の片隅にも残っていない。 今日は怖じ気づくことなく、彼女に話しかけることが出来るだろうか。 (・・・なんか、告白する前のシャイボーイみたいだな、俺・・・) ていうか第一、彼女今日高台に来るのか? それより、なんでこんなストーカーみたいな思考巡らしてんだ? 俺おかしい奴っぽいな。 ていうかおかしいのか? わ――、 「分からんっ!!」 叫んでからハッと気付き、口をつむぐ。 まあ石段の途中だから、誰にも聞かれてないとは思うが・・・。 (もう覚悟決めていこう、うん) 思考がショートするまで悩んでたってしょうがない。 その時になったら考えよう。 そう結論づけて、とりあえず脳を休ませる・・・・・・筈だったのだが、石段を上りきった俺は、またすぐに脳の活動を再開することになった。 その理由は決まりきっていた。 彼女が、そこに居たのだ。
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