第1章 始まった日々

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今日は、というか今は、昨日みたいに海を眺めてはいなかった。 ベンチに座り、心地よさそうに微睡んでいる。 予想の範囲外の、微睡みというアクションに、俺はどうすればいいのか分からない。 『体が鉛のように重くなった』という表現は、おそらく今の俺の状態にぴったりだろう。 どうしようという思考ばかりが先行してしまって、身体がついていけない。 俺が彼女をまさしく凝視して立ち尽くしていると、俺の不自然なオーラに気付いたのか、彼女が微睡みから目覚めた。 目をこすり、気持ちよさげに伸びをすると、俺に視線を向けた。 そして、 「・・・・・・」 「・・・・・・」 しばらく沈黙が続いた。 俺はただ何をすればいいのか分からず、硬直していただけだが、彼女は違ったようだった。 これは夢なんじゃないだろうか、とでもいうような、そんな驚いたような目を俺に向けていた。 何故だろう。 俺は実直にそう思った。 俺みたいなのが、この高台に来ることに珍しがっているだけなのだろうか。 いや、それにしてはあまりに驚きの度合いが違う。 なにか、感動が混じった驚きを目に秘めているように、俺には見えた。 わけが分からない。 彼女のことはもちろん、俺自身が何をしたいのかもだ。 ただ唯一、確実にわかることが一つ。 こんな状況になって、何一つ動くことすら出来ない俺の不甲斐なさだ。 ・・・本当に情けない。 ずっとどうしようか考えていたのに、いざとなったら、話しかけることさえ出来ない。 何しにきたんだ、俺は・・・! 話さなきゃ。 また昨日みたいに後悔したくない! その感情だけが、自身を突き動かす糧だった。 俺はその糧を十二分に使い、彼女に話しかけた。 そう、初めて彼女に・・・。
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