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光に包まれた後、目を開けた私たちは、あの時の駅にいた。
たが、どこか風景が違って見えた。
あたりを見れば天気は雨で、空も暗かった。
「ここF木駅じゃん。しかも雨だし」
そう言った少年はあたりを見渡すと、しばらくして不思議そうな顔をした。
「あれ、あの店、潰れたはずなのに……」
そう。
私たちは、あの男の時代にタイムスリップしていたのだ。
人の思いは時を越えると言うが、多分それと同じことだろう。
このミニクーパーは、ただのタクシーでないことを知ったのは、再び車内に戻って、その少年の父親の姿を見つける間に読んだ社則で分かったことだった。
どうやらこのミニクーパーは、強い思いを持った人しか乗せないタクシーであり、その思いは強さにより時代を飛び回ることができるのだという。
半ば嘘くさいと思いながら、少年の不思議そうな表情をみていると、どうやら本当なんだろうな、と分かる。
でも、今はそれよりその少年の父親の姿を探した。
そして再び、車から出た私たちは、数年前の雨の町を歩き始める。
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