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「え、ええ、先ほど、買われたお客さんがいましたが」
未だに驚いたままの店員は、そう答えた後、私はまた走り出した。
─間に合わなければ、意味がない。今ここで諦めたら、この子とあの親の気持ちが…!
「ねぇ! さっきからどうしたのさ! 説明してしてよ」
後ろからガシリと捕まれ、振り向くと少年の姿があった。
「一体どういうことなの? チケットがどうとか、父さんがどうとか。町もなんか変だし」
うまく説明できない自分が、これほど悔しいと思ったことは今までないだろう、と感じたが遅かった。社則ももっとよく読んでおくべきだったと思ったが、それも遅かった。
「ここで、君の父親は死ぬんだ……」
迷ったあげくに出た言葉は、あまりにも露骨だった。言った後で、もっとうまい言い方があっただろうと思ったが、すべてが遅かったのだ。
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