日本シリーズ

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 何はともあれ職に就けた私は、夜間に車を、このミニクーパーを走らせていた。  夜中もあってか、人影なんてどこにも見あたらない。  こんなんで仕事になるのか?  そう思いながら、車を走らせていると、数メートル先に人が手を挙げているのが見えた。 「おっ、はじめてのお客」  タクシーを運転しはじめたばかりの私は、やはり緊張したが、これも経験だということで、手を挙げた人の前で停車した。 「いやぁ、参っちゃうよ。こんな夜中だから、タクシーがつかまらなくて」  入ってきて一番に言った客は中年の男で、開口一番にそう言った。 「そうですか。良かったですね」  一言、私は言うと「何時間もですよ」と男は照れくさそうに笑った。 「えっと、どちらまで」  初めて言うこのセリフは、うまくは言えなかったが、どうやら伝わったらしく「F木台まで」と男は告げた。  私は備え付けられていたナビを操作していると男は不思議そうな顔をして言った。 「今のタクシーには、こんなものがついてるんですか」 「え、ええ。そうですけど」  検索しながら素っ気なく答えると、男はまた「へえ」やら「すごいな」という言葉をミニクーパーがF木台まで向かうまで並べていた。
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