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それから、1時間はしただろうか?
やっと林を抜けた。足は熱くなり、いい加減どこかで休みたかった…だが、そんなことも忘れるような事が起こる。
僕は、はじめて見る光景に呆然とした。
広がる大平原。
一直線に続く砂利道。
まばらに雲が泳ぎ回る、紺碧の空。
すばらしい、絵画の世界のような景色だった。
昼前の日射しが僕を照らし、まるでこの世界に僕が存在していることを認め、祝福してくれているかのようだ。
その全ては、これからの「希望」そのものに思えた。
だが、それと同時に、林を一つ抜けた先に、絶望が眼前に広がる世界があることを知った。
この対照性は、現実の世界と似通っている。多くの人間はそれを知らない。
「悠里…僕は絶対に君を連れて帰る。だからそれまで…待っててくれ」
光の先か、はたまた闇の奥底か、どこかにいるはずの悠里に向けて、僕は言った。
そして、僕の前に敷かれた、一本の長い長い道を僕は、ただただ歩き続けるのだった…。
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