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思考の海
あの人はこうだから、と
良かれと思って言の葉を紡ぐ。
すると、
「考え無しに発言するのはやめろ」
って、怒られた。
だから、次は、
こう言ったら、どう感じるかな。
じゃあ、ああ言ったらどうなるだろう。
そう考えて言の葉を紡いでみた。
そうしたら、
「なんでまた考えないで言うの」
って、怒られた。
だから、もっと考えてみた。
そしたら今度は考え過ぎて、
話に、ついていけなくなった。
そしたら、
「考え過ぎ。なんで普通の会話も出来ないの」
って、怒られた。
じゃあ、誰かに相談しよう。
そう考えた。
考えたけど、
「困らせてしまわないかな」
って考えたら、
話せなくなった。
話さないでいたら、
「何か悩んでるの? 心配だよ」
って、心配してもらえた。
だから話したら、
「そんなことがあったんだ」
って、かなり心配されてしまった。
心配は、かけたくない。
「どうしたら良いかな」
って、考えた。
結論的に、
「大丈夫だよ」
って、笑う事しか思い浮かべられなかった。
大丈夫と言っていたら、
自分が分からなくなった。
だから、
「『大丈夫』じゃないものにしないと」
って思ったんだ。
そうだ。
私には絵がある。
絵を描けば元気で、大丈夫だって伝えられる。
きっと、楽しい絵をかけば皆も笑ってくれるよね。
なら絵を描こう。
楽しい絵を。
皆が嬉しく思える絵を。
皆が楽しく思える絵を。
私が大丈夫だって伝えられる絵を。
そう、思ったんだ。
でも、そうしたら、
「逃げるのも大概にしなさい」
って、怒られた。
あれ、結局私は、
何をしたかったんだろう。
何でこうなったのかな。
そうだ、言葉がいけないんだったね。
なら、考えなきゃ。
でも、考えすぎたら言えない。
でも、考えなきゃ。
なら、考えすぎないようにしなきゃ。
……あれ
出口が、見当たらないよ。
ここは、息が苦しくて仕方ないね。
でも、水面までは遠くて
足掻いても間に合わないんだ。
嗚呼。
また、思考の海に、
溺れてる。
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