絶望の条件

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そっと社長は椅子を後ろに引くと、ゆっくり立ち上がった。 当然その動きは周囲の視線を集めた。 「ちょっといいかね?」 社長は動きと同様に、ゆっくりした口調で片桐に問いかけた。 片桐は黙ったまま自席に腰を落とした。 あまり良い態度では無かった。 「観死長さんに提案があるんですがね…現在の死神が如何にして働いているか興味をお持ちになられたわけですから、ご覧になってはどうか?」 社長の狙いが分かったかのように、片桐が反論する。 「だから、それは通過してきました!意味のない事をしても時間の無駄になるでしょう!」 再び彼は声を荒げた。やはり苛立ちがピークに達してきたのか? しきりにネクタイの結び目を右手で強引に修正していた。 「君はさっき私が言った事を忘れたかね? 人の話は最後まで聞くんじゃなかったか?」 社長は至って冷静に片桐を止めた。 「観死長さん。 うちの課で扱う仕事を見て頂けませんか? どんなケースであっても着実に仕事をこなす者がいますし… どうだろうか?」 これに、黙って聞いていた観死長が口を開いた。 「どんなケースであっても?」 「はい、そうです。」 「ならば、私が現役の頃に全う出来なかった例があるんですが、それを担当してみては?」 「どのような仕事でも受けますよ。」 社長の表情には笑みがある、しかし余裕がある訳ではない…この時、副社長は瞬間的に感じた。
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