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「命を奪う側と、命を奪われる側を同時に掛け持つのは?」
これに社長は眉間に皺を寄せた、これは今までに例がないケースだった。
命を奪う側は何らかの理由で殺意を覚え、それを実行する。
もう一方は、その何らかの理由で命を犠牲にする。
この二つの魂が、結び付く可能性は皆無、憎しみ合うのは当然だ。
死神は逝く者に接し、死を宣告をする。
仕事内容からして、これを同時に受け持つ事は、必ず両側を結びつけてしまう。
必然的に生まれるモノは【憎しみ】だ。
魂を同時に天界へ持ち帰る事は出来ても、二つの魂を納め、持ち帰る事は…
「片側には片桐を配属させます。」
片桐は観死長の言葉を聞いて、薄ら笑いを浮かべた。
それを見て、社長は気がついた。
[観死長は結果を期待していない…ただ、面倒を押しつけ、失敗を誘い…そして潰す…]
「どうだろう神様。
この二つの魂が無事に納まれば、私も考えてみたいと思うが?
この条件を受けてもらえますかね?」
観死長は社長に問う。
「考えていただけるならば喜んで受けますよ。
そういう難しいケースをもひっくり返してきた社員がいると私も聞いてます。
誰だったかな?閻魔よ、私の代わりに観死長に言うてくれんか?」
その声でフラストレーションを爆発させた副社長が、力強く立ち上がり、会議室のドアを割るような勢いある声で名を告げた。
「佐伯という男です!!」
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