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社の玄関で副社長に会った。
佐伯は自分に話があると確信した、間違いなく休暇の件で怒られる…そんな事が脳裏に過ぎった。
「おう…帰ったんやな。」
久しぶりに耳にする副社長の関西弁。
恐怖の調べを演出する極上の方言だった。
「はい!着任しましたよ!真面目に働きます!では、私は急いでますので…」
そそくさ、その言葉のままに佐伯は去ろうとした。
「佐伯よ、今回の件は頼んだで…」
足が止まった。
まさかの言葉に動揺をしたのだった。
佐伯は振り向かずに言う。
「副社長、皆が怖い顔をしてましたよ。
私は苦手なんですよ~怖い顔ってのがね、だからスマイルです!」
それを言うと再び歩き出した。
「佐伯!相手は片桐や!気つけなあかんぞ!」
副社長は願うような、祈るような、そんな気持ち達を言葉に乗せて、佐伯の背中に送った。
その背中から声がもう一度返ってきた。
「あの煙草野郎には負けませんよ~、あいつが肺ガンになるよう祈ってて下さいね!ぶっはっはっ!!」
そういうと自動ドアの向こうへ行った。
左腕をピンッと天に翳して、拳はしっかり握られていた。
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