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右には緑豊かな山があり、左には緩やかに流れる川がある。
そんな田舎と呼ばれる平和の中を旅人と歩いた。
自然な会話をしながら、私は彼を探っていた。怪しむといった形ではなく、好奇心がうずいたのだ。
彼は犬を飼っていて、カオリという女性にモテているらしい。
私の息子が好きだった、漫才師の方とも知り合いらしい。
そんな話を聞いていると、宿に着いた。
「ここです。」
彼は宿を見てポツリと呟いた。
「ボロ…」
確かな事だった。
瓦は色褪せ、玄関先の柱は木が剥がれている。
「こんな田舎では、ここしかないです…」
彼は腕で額の汗を拭き、私の方を見た。
「あなたの家でしょ?」
私はびっくりした。
その通りだった、ここは私が経営している宿。
彼は私の表情を見てから、また宿を見て言った。
「前言撤回!ビューティホー!」
呆気にとられる私を置いて、彼は宿に入っていった。
大きな「ただいま」という声も添えて。
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