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「突然ですいませんが、今夜一泊だけですが大丈夫でしょうか?」
私は口が開いたままだっただろう。
急な来客もそうなのだが、この辺りでは見かけないような若々しいスーツの男に見とれた。
「あの…やはり急過ぎましたか?」
その男の発声により、私は途絶えた集中を取り戻した。
「はい、大丈夫ですよ。
隣の部屋にお客様がいらっしゃいますが、よろしいですかね?」
そういうと彼は視線を足下へ移した、何を見たのかは知らない。
「隣のお客様ね…」
そう確かにポツリと呟いた。
「では、またの機会にします。
どうもすいませんでした、失礼します。」
彼は丁寧に一礼をし、そのまま宿を後にした。
彼が背中を向け歩いて行くのを見送った。
途中で立ち止まり、煙草に火をつけたのが、なんとなく確認できた。
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