第1章:小柳剛

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――ガチャン 僕は家の鍵を開ける。ギギギ、といった木の音でいかにドアが古いかわかる。 家は築20年のボロアパート。 母と2人暮らしで物心ついた時から父がいない。 この何年か調べていくうちに僕はどうやら愛人の息子だったということがわかった。 ドアを開くと目の前には食卓テーブル。このテーブルは母とリサイクルショップに行って購入したものだ。 引っ掻き傷、机の上の落書き。こんなものをなぜリサイクルショップの店員は引き取ったのだろうか……なんてことは今の僕にはどうでもいいことだ。 いつものようにおにぎりが1個と 『夕食だから食べてね お母さんより』 という置き手紙も横に殴り書きで置いてある。 母は仕事を掛け持ちしていて11時~20時まで近所のスーパーのレジ打ち、22時~6時までカラオケ屋で働いている。 休みはいつも月曜日でそれ以外の曜日は一日中仕事だ。
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