一章 サンタな熊さん

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 しかし、二千円という破格の入場料にも関わらず一時間で五十人もの客が入った。  衣装なんかは借り物だし、準備に使った経費は多く見積もっても一万円ほど。  つまりたった一時間で九万円の利益……優羽恐るべし。  現在優羽は最後に着た衣装のチャイナドレス姿。  手に持っている熊のぬいぐるみにはキョンシーを模した御札がはりつけられているのだが……なんともミスマッチだ。 「優羽、もう着替えてきていいぞ」  優羽は俺の言葉にコクリと頷くと、仮設試着ルームに向かった。  その途中、こちらを一度振り返った。 「あの……この後は一緒に居てくれる?」 「ん? あぁ、特に用事もないから構わないよ」  優羽はほんの少しだけ表情を緩め、試着ルームに入っていった。  この後も優羽といられるのか。  クリスマスパーティーを見て回るのもいいけど、今日は優羽も疲れてるだろうし、部室でゆっくりするのもアリだな。
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