【とある男の日曜日】  

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日曜日だった。 このところ連続し雨が降り続いた一週間。 今日は一週間の日差しとあって、気が付くと珍しいものを見るように空を見上げてしまう。 思わず外に出たくなる今日は、普段はあまり、しかも休日に外に出ようとしないその男さえも出掛けさせる不思議な力があった。 だから、だ。 その男は散歩をしていた。 お気に入りの服に、まだ一週間ほどしか履いていない新品同様の靴が日を反射して光っている。 すっかり秋めいてきたこのごろは紅葉が始まり、緑だった樹が赤黄に染まりつつある。 空を見上げれば千切れた雲がちらちらと浮かび、高い青空に均等に散らばっていた。 男は手に持っていた500mlペットボトルのお茶を一口、口に含み口内を湿らせた。 そして呟く。 「ああ……暇だ」 休みだというのに、その男はやることが無かった。  
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