act.1 始まり。

9/11
前へ
/13ページ
次へ
奇妙な沈黙が流れる。 ルシュフェルは探るような目で俺の言葉を待っているけど・・・動揺してなかなか言葉が出てこない。 だけどこの空気に耐えきれなくなり思わず先に口を開いた。 「俺を護ってくれた事に対しては礼を言う。 でもどうしてこんな所まで来たんだ? ・・・お前にも帰る場所はあるだろうに」 『帰る場所』、そう俺が口にすると何故か言いにくそうにルシュフェルは応える。 「・・・僕ね、ずっとずっと潤を護り続けてきたんだ。 肉体が産まれるより先――魂が生まれた時から。 仲間や魔王様から反感も買ったけど、こんな綺麗な魂を奪わせてはいけないって言い続けてきた。 ・・・だけど」 そこで一瞬淋しそうな顔をして一呼吸置く。 「つい先日魔王様から呼び出しを受けてね? お前がやっている事は我々悪魔を死線に追いやる行為だ、って言われたんだ」 息が、止まるかと思った。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加