原文

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それからは正に水を得た魚のように張り切って働いた。 日勤・夜勤などの交代制勤務というのも朝が苦手な私にはピッタリだった。 それぞれが動き回ったり外に出たりと、決まった席がないラフな空間もとても過ごしやすく、仕事も自分の担当する分をそれぞれのペースで期限までにしていくというものだった。 個人の決まった机もなく誰の監視もない職場となり、指摘や注意を受けることが少なくなってから、私は自分で自分のおかしなことに気がついた。 小さな作業部屋を帰りにぐるっと見回すと、手をつけて途中になったままの仕事があちこちに散らばっていたのだ。 いつ手をつけたのか覚えてもいなかったが確かに自分のやりかけだった。 そして一つの書類を読んでいて、気がついたら1ページに一時間も費やしていた。 目では文字を追いながら、頭の中ではいつの間にか違うことを考え始めていて、いくら集中しようとしてもいつの間にか気が散ってしまうのだった。 誰もそんなことに気がついてはくれない中、自分で気がつくようになって 「何かおかしいぞ、これはちょっと普通じゃないんじゃ…」と思うようになった。 こんな人間他にいるのだろうか、と。
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