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ダミアン・ハサウェイはデトロイト出身の四十三歳。 残忍な性格は子供の頃からで、強盗、強姦、殺人を繰り返す生粋の悪党。 両親を十五歳の頃に交通事故で亡くし、それをきっかけに周りは彼が変わると望んでいたが彼の素行はそこで更にエスカレート。 十九でこの世界に入る。今まで三十人以上を殺害してきた冷酷な悪魔だ。 ジョン・ダイスはアメリカ空軍に在籍していた優秀なパイロットだった。 射撃ではオリンピックに出られる程の腕前。だが無類の酒好きで、ある日軍の演習中に友人と些細な事で言い合いになり、その友人を射殺してしまう。その時ジョンは飲んでいた。 その後、軍を解雇されてダウンタウンにて荒んだ生活を送っていたが、三十五歳の時に銃の腕前を彼らに買われた。 今二人は全身を黒い服で覆い、疎らに雪が降る闇夜の雪山をエンジン音が殆ど聞こえないスノーモービルで疾走していた。 十一月の日本のとある雪山だ。 雪はたっぷりと辺りに積もっている。 やがて二人は勝手知ったる庭のように、スノーモービルを樹の影に滑らしそっと停めた。 闇と同化するみたいな黒ずくめの男達の姿は、異様で独特な緊迫感を纏っていた。 スノーモービルを降りると、流れるような動作で男達は音もなく闇夜の林を走った。 そしてジョンが左手をあげて(音をたてるな!)という合図を送り、二人は樹の根元に身体を伏せた。 ダミアンは双眼鏡を取り出し、ゴーグルを額にずらし、暗視機能付きの双眼鏡で覗く。 青い瞳。 双眼鏡から見えるのは、雪が舞う雪原。 そこに黒煙が立ち昇る建物の残骸。 建物が火事で崩壊したばかりなのだ。
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