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その廃墟だった研究所は、侵入者があるラインを越えると火の手があがり、自動的に崩壊する仕組みとなっていた。 焦げた臭いが辺りに充満している。 先程侵入者がラインを越えて研究所は崩壊した。勿論中に入っていた侵入者も全滅したはず。 残骸の前には濃紺のセダンが停まっている。雪山には不釣り合いな車種だ。 セダンの近くに人影が二つ。灰色のコート姿の中年男と、まだ若い顔立ちだががっしりした体躯の男。 彼らは侵入者ではない。 研究所が崩壊した後で現れた刑事だ。 若い男は寒そうに腕を組み、中年男は後部座席に頭を突っ込んで何かを探しているのが確認出来た。 かなり焦っている様子。後部座席をあさる中年男は、邪魔な物を外の雪原へ放り出している。 この刑事二人が、ダミアンとジョンが命令された今夜の標的である。 暗殺者達はその二人の人影を注意深く観察していた。 ダミアンの手にある不吉なスイッチ。それを押さなければならないタイミングを計っている。 冷静に息を潜み、冷徹な青い瞳を凝らす。 「ジョン。」 小声で双眼鏡を覗くダミアンが囁く。ジョンはライフルで人影に狙いを定めたまま応えた。 「気付かれたか?」 「まだだ。何かを探している。だが紙袋じゃない。しかし“保険”を置いた辺りをあさっている。」 「リモコンの射程距離は?」 「この距離なら問題ない。」 ダミアンは右手で双眼鏡を持ち、左手に“保険”と呼んでいる起爆スイッチを持っている。 「“保険”が見付けられたらもう仕方ないだろ?」 「ああ。」 「本部の許可は?」 「“こちらの存在に少しでも感付くようなら、保険を使え”と言われた。」 「“なるべく経費を使うな”とも言ってたのにな。爆薬を仕掛けるなんて二流の仕事だ。」 ジョンは皮肉を込めて嘲笑う。 「奴らは深入りし過ぎだ。警告には薄々気付いていたはずなのにな。もう本部の連中は限界なのさ。」 低い死神の声。 どうあれ漸く殺せる事に二人ともウズウズしていた。 「ふん。やっとケツに火が着いたか。さあわざわざ日本まで来て、しかもこんなカントリーな山奥にきたんだ。少しは楽しもうぜ。」 「楽しんでるさ。漸く終わる。」 「クックックッ……。男の標的に一年間は長かったな。」
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