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「なんなんだよ……それ、その、憎たらしいほど元気なテメェのせがれはよ」
「見たまま不完全燃焼だろうが。可哀相に。なんならくわえてくれたって」
「食い千切ってやろうか」
弾みで吐いて出た俺の憎まれ口に、奴の無遠慮な笑い声が降りかかる。畜生、と歯を食い縛る合間にも、ぐるぐると下降していく。意識が淀む、安寧を求めている。もはや指先ひとつ動かすことすら難しい。
口先、頬、首筋。彼の口付けにされるがままなのも、本来は不本意。ただ今は、一時的にからだが不自由だからこうやって受け止めてやっている、だけのことだ。
「もう……寝る」
「おう」
「起こすなよ」
「好きなだけ寝てな」
爪を引っ込めた温かな指先が頭を撫でる。かちりと交わした視線の先、彼は慈愛にも似た眼で見下ろしている。先ほどまで身体を無理やり繋げてきた彼と同一人物なのだろうかと疑いたい。けれど今日はもう、その余地もない。
何はともあれ、飛ばなかっただけ今日はマシ。いかれた基準に物言わせながら、ゆっくりと目を閉じた。
end
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