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光は2人を包み込む。
いつの間にか、心臓の高鳴りが収まっている。
ここで初めて、ランと彼女は自分を取り戻し、お互いを確認する。
やはり、初めて会う人だ。
「一体、あなたは…。」
と、言ってランは掴んでいた彼女の腕を離す。
「こっちのセリフだ。」
彼女は放たれた腕を上げて、手のひらで長く黒い髪を掻きあげた。
「それより、お前。肩にある´ソレ`なんだ?」
と、彼女は指を差す。
「あなたこそ、胸元に浮かぶ´ソレ`は一体…。」
ランは彼女の胸元に浮かぶ輝くモノを指差した。
ランにも、そして彼女にも見覚えがあるのだ。
『…羽。』
ランの肩には白い羽が。
彼女の胸元には黒い羽が輝きを放っていた。
彼女が吸い込まれていくように、自分の胸元にある黒い羽に手を伸ばした途端。
辺りを包んでいた白い光は、彼女の周りに集中し圧縮するように丸めこんだ。
「うわっ!」
ランは思わず叫ぶ。
光が一瞬止まるとまた、辺りに散らばった。
そこには彼女の姿がない。
「どっどうして!」
ランは恐怖に包まれる。
自分の肩には悠々と白い羽が浮かんでいる。
しかし、ランには恐怖心を勝るものが胸を支配する。
ランは不思議と、笑顔を浮かべ 「よしっ。」と、声を張り上げてから白い羽を掴んだ。
好奇心。
ランは今、好奇心が
満ち満ち溢れている。
白い光がランを圧縮する。
全てが潰れる感覚。
目を閉じて大丈夫だと、自分に言い聞かせて
目を開く努力。
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