戸惑いの中で

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表を歩くと、汗がじんわりと伝っていく。 「あ…あつい。」 ランは学校の屋上でヘタっていた。 日の当たらない。 影の隅で…。 そこへ 「ランいる?」 と、ランの聞き覚えのある声がして、とっさに 「ニア?」 と、答えた。 ニアはランを見つけると、可愛らしい満面の笑みを浮かべる。 「ニア…授業はどうしたの?」 「ランこそ…。」 ニアは、日陰にいるランの横に肩を寄せて座った。 じんわりと冷たくて 気持ちが良い。 「ねぇ、ラン。今日一緒に帰れる?」 ニアとランは家が近く、小さな頃からの幼なじみ。 学校が終わってもよく、遊んでいた。 「ごめん。ニア、今日は約束があるんだ。」 ランは、笑ってみせる。 「そっか…。」 と、答えるニアは、少しふてくされている。 「ニア、拗ねてるの?」 と、ランがからかうと 「私だって、毎日ランと帰れる訳じゃないもん。」 ニアは、泣きそうになってしまった。 最近のランは、妙に大人びてきていてニアは必死に追いかけていたのである。 特に 「リラって子に会うの?」 リラが来てからは、ランがドンドン遠くなるのを感じ、不安になるばかりだった。 「リラは…。」 ランは、リラとの関係について説明がうまくできない。 「仲良しなんだね。」 ニアは、笑顔で言って見せた。 「うん…。そうだね。」 と、ランは言うしかない。 ランはリラと出逢った日から毎日、あの扉の向こう側に通った。
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