1人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
今日のようにそれほど寒くなく、それでいて冬の匂いを感じる夜…………
県大会の予選があるため、追い込みについつい熱が入ってしまう杏子は、ふと見た時計が7時を過ぎているのを見て、慌てて帰宅している最中だ。
ふと、後ろから何か、裸足で歩いてくるような音が聞こえた気がした………
少し疑問に思いつつ、後ろを見る。
街灯もそこそこあるため、視界は良好だ。
しかし、誰もいない……
(きっと疲れてるのよね。)
と気にせず歩き出した瞬間に
───ヒタッ───ヒタッ───
………聞き間違いではない……間違いなく、音は存在した………
(幽霊が出るような時間でもないし………変な人だったらヤだなぁ………)
そう思い、彼女は足を速めた。
しかし、「音」も確実に速度を上げている………
杏子はその正体不明の「音」に恐怖を覚え、知らず知らずに小走りになる………
そう言えば、友達に聞いたことがある………1人の女性がトラックに轢かれ、右腕と頭が身体と離れた………
そして事故があった時間帯に、失った右腕を探し、己の頭を片手に、さ迷い続けているらしい………
元々人を疑う性格のその女性は、「自分の体を誰か別人が使っているのでは」と思い、目星をつけた女の子をつけ回すそうだ………
そして、「彼女」に目をつけられた女の子は、皆「彼女」と同じ部分を失い、「殺される」と言う………
つい嫌なことを思い出し、さらに、足を速める。
つられるように、「音」も速くなっている。
杏子はあまりの恐ろしさに声も出せず、必死に「音」から逃げる。
(家が見えた…!!)
息も絶え絶えに自宅に駆け寄る………そして─────
杏子は何が起こったか分からなかった………
ただ分かったのは………目の前に転がる、自分の身体だけだった──────
最初のコメントを投稿しよう!