また、ある夜のお話し………

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今日のようにそれほど寒くなく、それでいて冬の匂いを感じる夜………… 県大会の予選があるため、追い込みについつい熱が入ってしまう杏子は、ふと見た時計が7時を過ぎているのを見て、慌てて帰宅している最中だ。 ふと、後ろから何か、裸足で歩いてくるような音が聞こえた気がした……… 少し疑問に思いつつ、後ろを見る。 街灯もそこそこあるため、視界は良好だ。 しかし、誰もいない…… (きっと疲れてるのよね。) と気にせず歩き出した瞬間に ───ヒタッ───ヒタッ─── ………聞き間違いではない……間違いなく、音は存在した……… (幽霊が出るような時間でもないし………変な人だったらヤだなぁ………) そう思い、彼女は足を速めた。 しかし、「音」も確実に速度を上げている……… 杏子はその正体不明の「音」に恐怖を覚え、知らず知らずに小走りになる……… そう言えば、友達に聞いたことがある………1人の女性がトラックに轢かれ、右腕と頭が身体と離れた……… そして事故があった時間帯に、失った右腕を探し、己の頭を片手に、さ迷い続けているらしい……… 元々人を疑う性格のその女性は、「自分の体を誰か別人が使っているのでは」と思い、目星をつけた女の子をつけ回すそうだ……… そして、「彼女」に目をつけられた女の子は、皆「彼女」と同じ部分を失い、「殺される」と言う……… つい嫌なことを思い出し、さらに、足を速める。 つられるように、「音」も速くなっている。 杏子はあまりの恐ろしさに声も出せず、必死に「音」から逃げる。 (家が見えた…!!) 息も絶え絶えに自宅に駆け寄る………そして───── 杏子は何が起こったか分からなかった……… ただ分かったのは………目の前に転がる、自分の身体だけだった──────
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