また、ある夜のお話し………

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独り暮らしをしているため、家には誰もいない。 私は、さっき起きたことを忘れるように、熱いシャワーを浴びた後、すぐに寝ることにした。 時計は11時を指していた……… ふと、目が覚めた時、私は体の異変に気付いた。 (………動けない!?) 金縛りは何度か経験してるが、慣れない。 と言うより、慣れたくない。 横向きで寝るのが癖なので、そのまま固まっている。 「……………セ………」 背後からボソボソと、何か聞こえる。 もちろん、「居る」気配がする……… 「……エセ………カエセ………」 [返せ] それは「あの」女性か、少女の霊であることを指しているのか……… 「カエセ……ワタシの腕をカエセ………」 当然、私が持っている筈もなく、ただただ聞き流すしか出来ない……… 「腕を………腕をカエセ……カエセ……カエセ……!カエセ……!!」 静かに、それでいて力強い、怨みの籠った声……… 何も出来ない……… どうしようもない……… ドウスレバイイノ………? ドウスレバ………… そこで私は、意識を手放した………… 気付いたとき、金縛りは解け、背後の気配もなくなっていた………… 時計を見る………2時……か……… 眠れそうもないな……… 仕方なしに、温かいココアや甘いものを食べて落ち着こう……… で、落ち着く頃には既に5時……… 寝るのは諦めた。 その日から毎日、いや、毎夜「彼女」は私の枕元で、怨み辛みを唱え続けた……… 飽きずに「カエセ!カエセ!!」と何度も何度も………… その度に、温かいココアや、適当な甘いものを食べて、気持ちを落ち着かせる。 そんなことが、冬の下旬から、春の下旬辺りまで続いた……… 流石に皆も変だと思い、心配そうに声をかけてくれるが、「悩みの種は幽霊です」なんて、口が裂けても言えない……… 言ってどうにかなるものでもないし…………
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