ある夜のお話し……

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深夜……人も、虫も、月さえも息を潜める漆黒の中……貴子は己の不運っぷりを呪いながら歩いていた……… (何でこんな日に限って車検なのかなぁ……) この日は運悪く車検の為、徒歩で出社した。 しかも、残業を嫌って程回され、ようやく終わった時には既に10時を過ぎていた。 幸い、会社と自宅は歩いても何とか辿り着ける距離にあるので、節約の為、歩いて帰る事にしたが、久しく歩いてなかったので、大事な事を忘れていた…… (ここ……馬鹿みたいに暗いんだった……) そう、今貴子の足元は数少ない街灯にのみ、照らされていた。 しかもこの辺りでは最近不審人物、謎の失踪、そして変死体が数多く目撃されている事を思い出し、身震いした。 ……その時………… (……?…気のせい?) 何か足音がした気がしたので歩みを止め、振り返って目を凝らすも、いかんせん真っ暗なので何も見えなかった。 (まさか…ね……) ただの聞き間違いと思い気にせず歩き出した。 ………コツン………… ………確かに聞こえた……… (嘘……偶然…よね……?) そう思いながらも、その歩みは次第に速くなっている。 コツン…コツン………… (ヤだ……近づいてる…!?)ただの通りすがりけだ!と必死に思い込もうとするが、身体はその恐怖に勝てず、知らず知らずに小走りになっていた。 コツン……カツッカツッカツッ (イヤッ!何っ!?走って来た!!?) 貴子はすっかり怯え、走り出していた。 カツッカツッカツッカツッカツッ! (イヤッ!嫌ぁっ!!誰か!誰か助けてっ!!) そう心で叫ぶが、あまりの恐怖の為声が出なかった。 カツッカツッカツッカツッカツッ! その間も追跡者はどんどんと距離を縮めている。 カツッカツッカツッカツッ! 大分大きくなったその音に貴子はもう、パニックを起こしていた。 (ヤだっ!ヤだっ!!追って来ないで!!ついて来ないでよぉ!!!) カツッカツッカツッカツッカツッ! もう追跡者はほぼ真後ろにいるっ! (嫌っ!!嫌っ!!誰か!誰かぁ!!!) カツッカツッカツッカツッ! そして……… カツン! ガシィ!! 「ーーーーッ!!!!」 不意に肩を掴まれ、貴子は声にならない叫びを放ち、勢いよく振り向いてしまった。
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