くらいにぃ

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十月も終わりに近づいた頃、木枯らしが吹き渡るこの空の下。 俺は憂鬱な学校という名の、半ば機械的な義務を終え、家へと帰る真っ最中。 銀杏の葉は、もう大分色をつけ、儚くも散って逝く。 空を見上げると、いかにも重そうで暗い灰色の雲が、どんよりと青い空を覆い隠していた。 それを見るたびに思う。 ―――自分は今、何をしたいのか。 進路を決めろと教師は言う。目標かあるやつは簡単だろう。取り柄のあるやつも、また然り。 じゃあ、何の目標も取り柄もないやつは、どうすればいい? 家庭環境が悪いわけでも、貧乏でもない。寧ろ、裕福で幸せな方だろう。 学校を出てすぐに働く必要もなければ、かといって進学したいという気持ちもない。 何と無く進学するのは、間違っている気もする。 教師は無責任だと思う。 決めろと言う割りには、あとは俺達生徒任せ。そのくせ、決めた進路にケチをつける。 結局、誰も教えてはくれないんだ。 「よお。なぁに失恋したみたいに背中丸めてるんだ?」 突然声をかけてきたのは、ダチの静夜(セイヤ)。名前とは正反対の煩いやつ。 だけど、とても頼りになるやつ。 「和志(カズシ)は進路どうするんだ?」 今はその話はやめてほしいんだけどな。もう溜息ついて笑うしかなくなる。 「決まってない」 「マジかよ?! さっさと決めろよ。優柔不断め!」 優柔不断とは、言わないだろ。それは。 「静夜は? やっぱ進学?」 「勿論! 18やそこらでまだ働きたくないからな。やりたいこともあるし」 やりたいことか。 「いいな、おまえは。そういうのがあって」 呟いた言葉は、木枯らしに紛れて静夜に聞こえていないと思った。 けれど聞こえたようで、静夜は立ち止まり俺を見る。 「和志、やりたい事ないのか?」 静夜の、酷く真剣な声に、俺は肩を竦めるだけ。 「ないのか。おれ、てっきり和志は美大に行くかと思ったのに」 確かに俺は、絵画を描くのは好きだ。好きだし、実際何度か賞もとっている。 だけど、それと俺の進路になんの関係があるだろうか。
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