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新学期の朝、私ヒカリは浮かない顔をしていた。鏡の前でため息をつく。長く伸ばした黒髪にアイスブルーの瞳。この二つ故に憂鬱になるのかと思うと、今すぐ鏡を叩き割りたくなる……。
「……行きますか」
髪をとかして深紅のリボンでポニーテールをつくり、鏡を離れる。
長い廊下を進んだ先にある部屋では、もう既に食事の準備が整い、家族がそろっていた。……といっても、父セイル・メルセンしかいないのだが。
「おはよう、ヒカリ」
「おはようございます、お父様」
座りながら挨拶をして、用意されたパンをほおばる。
「今日から魔法学校だが、虐められたら父様にいうんだぞ!」
食べている最中なので私は黙って肯いた。その後も、永遠と注意が続いたが、急に沈黙が訪れた。不思議に思って私がフォークとナイフを置いて父親を見ると、父親は言いかけては口を閉じるという動作を延々と続けていた。
そういえば、と私は父親の癖の一つを思い出す。
大事な話があるときには前置きが長くなる……大事な話が深刻なら尚更。
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