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「やっぱり関東と全然違うなぁ」
「何がや?」
「周りの人がみんな大阪弁で、漫才聞いてるみたい」
「そおか~? 俺やていつも大阪弁やろ?」
「そうだけど……太田一人が大阪弁しゃべるのと周りがみんな大阪弁ってのではかなり違うよ。なんか凄いもん」
「そんなもんかなぁ。よおわからへんわ」
太田はハフハフいいながら、器用にヘラを使って熱々のお好み焼きを食べている。俺はまねできなくて箸で食べてるんだけどね。
「うまいか?」
「うん」
やっぱり本番で食べると美味しい。こじんまりしたお店ていうのも、味があっていい。
「え、なに?」
太田の手が俺の口元に伸びてきて、驚いて腰を引いてしまった。
「何をそんなにびびってんねん」
「や、だって。急に動かれたら誰だって驚くって」
人間の自然な反射だと思う。
太田はにやけた顔で俺を見ている。明らかに俺をからかって楽しんでいる顔だ。
「なんだよ」
俺は目の前の男をにらんでやる。ちっとも効果がないってわかっているけどさ。
「青のりついとったで」
太田は青海苔の付いた親指を俺に見せてから、その指をペロリと舐めた。何かを示唆するその仕草が卑猥で、顔が熱くなる。
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