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「ソラはかわいいなぁ。ここで何もせえへんって」
「言うな……!」
太田と付き合い初めて八ヶ月。俺はまだまだ恋人のスキンシップに慣れない。恥ずかしいという思いがなかなか抜けないのだ。
「食べ終わったら俺の家に行こか」
「あ、うん」
この旅行中の宿泊先は太田の実家だ。気を使わなくてもいいと太田から言われているが、気分は少し微妙だ。表向きは友人として遊びに行くのだが、実際は付き合っているわけで。何と無く後ろめたい。
「嫌か…?」
そんな俺の気持ちを読んだように、太田が声をかけてくる。
「どうして? 嫌なわけないだろ?」
「そうか」
「かえって楽しみだよ」
「そっか」
太田が嬉しそうに笑ったから、俺も嬉しくなった。恋人の笑顔は、何よりも俺を幸せにしてくれる。
「ただいま」
玄関の扉を開けたら、中から女の人が顔を出した。お母さんだろうか、なかなかの美人だ。
「おかえり」
「初めまして、柳澤宇宙です。お世話になります」
「いらしゃい、虎太郎の母です。気楽にしてあがってや」
「はい」
太田に目配せをしてから、俺は家に上がらせてもらった。
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