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俺は視線を由衣ちゃんから太田に移した。太田はばつの悪そうな顔をしている。
「そんなことないで」
太田は否定するけど、女子二人は首を横に振った。まあね、太田は外見いいし優しいし、モテないはずがないってわかっているけど、でも面白くない。
「そんなにモテたんだ?」
「そうそう。虎太郎はとにかく女の子に人気があったなぁ」
満里菜が笑いながら言う。
「うるさいで、満里菜」
「なに言うてんの。彼女取っ替えひっ変えやったやん」
まさか俺が今付きあっている彼氏だなんて思いもしない二人は、好き放題だ。
太田が過去に遊んでたのは知っているし、やっぱりここは聞き流すのが得策だろう。弱味を握って何かの時に使うもよし。
……なんて強がりだけどね。
「うるさいって言ってるやろ」
「あ~冷たい。仮にもファーストキスの相手に向かって」
「えっ!?」
反射的に声が出てしまった。ファーストキスって……
「ああ? 幼稚園の時の話やろ? そんなガキの頃の話を今更持ち出すなや。なあソラ」
「まあ……」
幼稚園。でも微妙。己の了見の狭さが悲しい。
「毎日好きってキスしてたやんか、どう思う柳澤君」
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