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「遼平がくれた小説ね、今でも私の宝物だよ」
そう語る彩乃は本当に幸せそうに微笑んだ。
「一世一代の告白だったからな」
「あんな告白生まれて初めてだよ。遼平に想われて、私は幸せ者だね」
「生まれて初めてだろうよ……あんな事するやつは俺くらいなもんだ」
自分で言って恥ずかしくなった遼平は、食後のコーヒーを入れるために席を立った。
遼平がカップを二つ取り出すと、彩乃は思い出したように立ち上がる。
「ごめん、遼平。ちょっと用事思い出した。じゃ、日曜にね」
立ち上がった彩乃は、いそいそと帰り支度を始めた。
玄関に立ち、靴を履いた彩乃は遼平を振り返る。
「それじゃあね」
そう言って帰ろうとする彩乃の腕を捕らえた。
「……? 何?」
もう一度遼平を振り返った彩乃は、次の瞬間一歩後ずさる。
遼平の顔が目の前にあったから。
「りょ、遼平……」
「彩乃」
そっとささやくと、彩乃は観念したのか瞳を閉じる。
恥ずかしいのだろう。
顔はすでに紅く染まっていた。
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