第一章

7/8
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「遼平がくれた小説ね、今でも私の宝物だよ」 そう語る彩乃は本当に幸せそうに微笑んだ。 「一世一代の告白だったからな」 「あんな告白生まれて初めてだよ。遼平に想われて、私は幸せ者だね」 「生まれて初めてだろうよ……あんな事するやつは俺くらいなもんだ」 自分で言って恥ずかしくなった遼平は、食後のコーヒーを入れるために席を立った。 遼平がカップを二つ取り出すと、彩乃は思い出したように立ち上がる。 「ごめん、遼平。ちょっと用事思い出した。じゃ、日曜にね」 立ち上がった彩乃は、いそいそと帰り支度を始めた。 玄関に立ち、靴を履いた彩乃は遼平を振り返る。 「それじゃあね」  そう言って帰ろうとする彩乃の腕を捕らえた。 「……? 何?」 もう一度遼平を振り返った彩乃は、次の瞬間一歩後ずさる。 遼平の顔が目の前にあったから。 「りょ、遼平……」 「彩乃」 そっとささやくと、彩乃は観念したのか瞳を閉じる。 恥ずかしいのだろう。 顔はすでに紅く染まっていた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!