20人が本棚に入れています
本棚に追加
雛人形を娘から奪い取ると、庭に投げつけて踏みにじりました。
「やめて!返して!!いじめないでっ!!」
「畜生!!こいつがっ!よくもよくもよくもっ!」
娘は男にすがりついて泣き叫びましたが、男は泥に塗れた雛人形に灯油をかけました。
「いやだああ!燃やさないでぇぇぇぇっ!!」
「最初からこうしとけばよかったんだ!」
そして男は火をつけました。
とてもよく燃えました。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
悲鳴は雛人形からあがりました。
甲高い、子供のような声でした。
「熱イ!熱イヨウ!!助ケテ!助ケテ!助ケテ!」
雛人形の黒髪が嫌な匂いをたてながらみるみる縮み。
白い顔はあっという間に火ぶくれに覆われ、目が白く濁り、皮が弾けて黒こげになりました。
それでも雛人形は叫び続けました。
「熱イヨ!痛イヨ!オ父サン助ケテーーーーーーーッ!!」
雛人形は娘の声で叫びました。
「だから言ったのに……燃やさないでって」
呆然とする男に、娘は聞いた事もない冷たい声でそう言いました。
最初のコメントを投稿しよう!