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娘は一目で夢中になり、家に帰ってからも、友達の家の雛人形がどんなに綺麗で素敵だったかを両親に絶えず話しました。
だけど、自分も欲しいとは決して言う事はなく、折り紙で雛人形を折って机に並べて眺めていました。
その小さな後姿に、男の胸はさすがに痛みました。
娘の為、何としてでも雛人形を手に入れる!
男は堅く心に誓って家を出ました。
数時間後、パチスロの台の前でがっくりとうな垂れる男の姿がありました。
今更ハローワークに行って、仕事を探しても雛祭りには到底間に合わないと思ったのでした。
だけど男のズボンのポケットには現金が35円しか入っていませんでした。
男はとぼとぼと家路につきました。
人形店の前を通りかかったとき、ショーウインドウをカチ割りたい衝動にかられましたが、どうにか思い留まりました。
近道しようとお寺の庭を横切ろうとした時、男の足はぴたりと止まりました。
お堂の中に大量の雛人形が所狭しと置かれていました。
人形供養の為に集められた雛人形でした。
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