第五章 魔性の女

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一体、何がどうなっているのだろう!? 完全犯罪を確信していたはずの男が自らの命を断ち、変わりに、死んだはずの女が蘇り…。 全くもって、理解に苦しむ展開が起こりえたものだ。 その後の警察の調べで、直哉の背広のポケットに、遺書とは別に毒入りの瓶が見つかった。それが七海の死因となった毒物と一致し、一連の件は直哉に因るものと断定された。 とは言え、七海は生きていたのだから、直哉の死は無駄死にとゆう事になる。 まあ、同情してしまう部分もあるが、それでも、人の命を奪おうとする行為をしたのだから、自業自得かもしれない。 そんな直哉の死を、ホテルの一室で、愉快そうに話し込む男女の姿があった。 「うふふ…馬鹿な男よね」 「はは、ホント、マヌケな男だよ、アイツは」 「だけど、まさか、私が生きていたなんて夢にも思ってなわよね」 「てか、それさえ知らずに死んだんだぜ。ふははは…ホント笑えるヤツだよ」 どうやら、女の方は七海のようだ。 それにしても、いくら自分を殺そうとしたとはいえ、自分の夫が死に、こんなにも喜べるものか? それに、相手の男にも何か引っ掛かる。 恐らく、この男こそが、直哉を暴挙へと走らせた浮気相手なのだろう。
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