第一章 真紅のワイン

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とはいえ、まあ、仲が上手くいってない夫婦なんてのは、この世の中、五万といる事だろう。年々、離婚する夫婦が増えている事からも、それは見てとれる。 そもそも、夫婦なんてのは、所詮は他人同士。生まれや育ちも違ければ、互いの生活スタイルだって違う。摩擦が生じるのが当たり前と言っても過言ではない。 そんな男女が、同じ屋根の下で暮らす事自体、非常に難しい事なのだ。 直哉達も、その夫婦間摩擦の臨界点へと達し、今では互いの顔さえも見るのもままならぬ程、日常会話さえも殆んどと言っていい程していない。 それ故に、いくら出張帰りで疲れているとはいえ、直哉の足は、七海のいる我が家へとは進まず、躊躇ってしまう。 だからって、いつまでもここにいるわけにもいかない。 しばらく、ドアの前を行ったり来たりしていた直哉だったが、覚悟を決めたように、オートロックパネルの暗証番号を押した…。
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