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エレベーターを使い、8階まで來ると、直哉は自分の部屋の前で足を止めた。
その『803』の部屋の前には、【霧島直哉・七海】と、かわいらしくハートで縁取られた表札が掲げられている。
それだけを見る限り、二人が崩壊寸前の夫婦とは思えない。
しかし、世間体を気にし、こうやってカモフラージュを施し、外面だけでも円満を装ってる夫婦はいる事だろう。まさしく、直哉達がそれだった。
ドアを開けると、玄関は暗かったが、奥にあるリビングからは、光りが溢れ射している。
「はあ…」
またしても、直哉は重苦しいため息を吐いた。
明かりが付いてる時点で、七海が寝てない事が立証されてしまったのだ。嫌がおうにも、顔を合わせるのは必至だろう。
そう思うと、ますます直哉の心中は、穏やかでいられず、憂鬱になってしまう。
それでも、仕方なくもリビングのドアを開けると、案の定、ソファーでゆったりと寛ぐ七海の後ろ姿が目に飛込む。
その七海の前にあるテーブルの上には、ワインボトルとグラスが置かれ、一人で飲んでいた事を物語っている。
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