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「で、勝算は?元PM、イケメンな上に相当デキるんだろ?
ある意味、一度、負けてるわけだし」
久保田は呆れたように、可愛そうなものを見るようにマスターを見て、ごまかすように、ワインを煽る。
その気配を見過ごせなかったマスターに見据えられ、久保田はため息と一緒に言った。
「相手は、栗原じゃない。優里菜だろ」
それから久保田は、どこか遠くを見るような目をした。
「…なるほど、確かに。で、勝算は?」
畳みかけるようなマスターに、久保田は珍しく素直に答えた。
「勝算なんてないよ。俺は、彼女に一度だって勝ったことはない。ただ」
「ただ?」
「ただ、ご存知のとおり、"俺は"諦めが悪いだけだ」
「……」
マスターへのあてつけか、ニヤリと笑った久保田に、マスターは微妙な沈黙の後、視線を逸らすと、卵料理に取りかかった。
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