2/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「本当に、できちゃったの?」  陽子は、ずれてしまった黒縁眼鏡をそのままに、大きく目を見開いた状態で訊いた。驚いたひょうしに陽子が落としてしまったファイルを、拓巳は拾いながら質問に答えた。 「嘘を吐いたところで、どうなるんだよ。医者の代わりに手術させたり精神的なケアをさせたりするんだから、学習能力が高くて自分で応用できるような、最高の『脳』を作れって言ったのは井頭さんだろ。苦労して作ったっていうのに……はい、ファイル」 「あ、ありがとう……まさか、こんな早くにできるとは思ってなかったからさぁ」  陽子はファイルを受けとると、それを側にある机に置いた。眼鏡の位置を直し、話を続ける。 「ちょっとびっくりしただけ。体はもうできてるから……そういえば、まだ体の方は見てなかったんだっけ?」 「ああ、ずっとモニターとにらめっこしていたからな。井頭さんの美的センスで作られた顔のロボット、どんな可哀想なヤツか」 「少なくとも、アンタに作られるよりかは何倍もマシよ」  陽子は机の引き出しから鍵を取り出して言った。 「見せてあげるついでに調整するから、さっさと『脳』持ってC区画の第一研究室に来てちょうだい。なるべく早めにね」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!